「今夜はデートだから、残業できない!」ということで、

社員が勝手にコソコソと休憩時間中に仕事をしてしまう

なんてことがありますよね?

 

会社は、

休憩時間を自由に利用させる義務があります。

 

と同時に

労働時間を把握する義務もありますが、

・休憩時間中の社員の行動をキッチリ監視している。
・休憩時間中に働く場合は、上長の許可制にしている。

という会社は極めて少ないのではないでしょうか?

 

労働基準法が定める最低限の休憩時間を与えている

ことを客観的に証明できる企業は稀でしょう。

 

 

厚生労働省労働基準局が毎年発表している

「労働基準監督年報」によれば、

労働基準監督署の定期監督(≒立ち入り検査)は、

全国で毎年約13万事業場が対象となっています。

 

定期監督を受けた事業場のうち、

適切に休憩を与えておらず、違法状態だった事業場は、

平成30年度では全体の約2%、2,574箇所ありました。

 

このうち、

検察に(書類)送検までされたのは、

平成30年度では1件のみであり、

過去10年間でも10件を超えた年はありません。

 

摘発件数が少ないとはいえ、

一定の潜在的リスクを多くの企業が抱えている

と言えるのではないでしょうか?

 

 

 

【休憩を与えないとどうなるか?】

まず、

労基法第34条に違反するので、刑事罰として、

6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金

に処される可能性があります。

 

民事的には、

休憩できかなった肉体的・精神的苦痛という非財産的損害

に対して、慰謝料を請求される可能性があります。

 

さらに、

休憩時間中に労働させていた場合、

賃金支払いの問題も生じますが、

賃金を支払う必要があるかどうか?については、

その日の労働時間が法定(1日8時間)内に収まっているかどうか?

で分けて考える必要があります。

 

 

 

【法定内に収まっていない場合】

たとえば、

1日8時間勤務、休憩1時間という労働条件の場合

休憩時間中の労働=法定時間外労働となります。

 

この場合、

残業をした場合と同じ扱いになるので、労基法第37条

に則り、1時間分の賃金を支払う義務が生じます。

 

もちろん、

休憩できなかった時間数分、終業時刻を早めた結果、

所定労働時間を超過しなければ、支払いは不要です。

 

 

 

【法定内に収まっている場合】

たとえば、

1日5時間勤務、休憩1時間という労働条件の場合

休憩時間中に働いても、法定労働時間の上限である

8時間に収まることになります。

 

この場合は、

労働契約における賃金計算の定めに従うことになります。

 

 

1.特段、定めがない場合

割増賃金の支払いは不要ですが、

所定労働時間1時間分の賃金を支払う必要

はあるでしょう。

 

たとえば、

1日5時間勤務で日給10,000円の場合であれば、

休憩時間に1時間働けば、2,000円を支払う必要があります。

 

 

2.「基本給に含む。」という定めがある場合

たとえば、

「基本給には、休憩時間中の労働に対する賃金を含む

ものとし、休憩なき場合も追加の賃金支払いはない。」

というような定めが考えられます。

 

法定内労働であれば、労基法第37条の規定は関係ない

ので、若干ビミョーではありますが、アリかもしれません。

 

ただし、

休憩時間中の労働時間を考慮して基本給を時給換算

すると最低賃金額を下回ることは許されないでしょう。

 

 

3.「所定外かつ法定内労働は、〇〇円」と定めている場合

たとえば、1日5時間勤務の場合であれば、

「1日3時間以内の残業(休憩時間中の労働を含む。)

をした場合は、時給1,000円とする。」というような

定めがあるときは、その定めに従えばOKです。

 

時給額は、所定労働の単価と同額である必要はなく、

最低賃金額を上回ってさえいれば、いくらでもOKです。

 

「所定外かつ法定内の労働(休憩時間中の労働を含む。)

20時間分の賃金として、固定残業代を月額20,000円

支払う。」という定額払い制を採用してもよいでしょう。

 

 

 

法定の休憩時間をキッチリ与えられていなくて、

労働基準法違反であったとしても、未払い賃金がなければ、

企業経営上、深刻なダメージになることはないと思います。



トップページへ戻る。