いわゆる36協定等の労使協定を締結する際は、

社員の代表者と話し合いをする必要があります。

 

この代表者ですが、

社員の過半数が所属する労働組合がある場合、

会社は必ずその労働組合と話し合いをする必要が

あり、選択の余地はありません。

 

メルマガを執筆するにあたり、念の為、

36協定の締結者である「労働組合」の定義について

調べてみたところ、

厚生労働省労働基準局が編者となっている書籍

「令和3年版 労働基準法 上(労務行政)」に、

『「労働組合」とは、単なる労働者の集団ではなく、

労働組合法第2条に規定する要件を満たすものに限る。』

という記載がありました。

 

今回は、

36協定を締結できる労働組合の要件について

考えてみたいと思います。

 

 

【事例

・仕事と私生活をキッチリ分け、残業はしたくない
と考える若手社員が中心となり、労働組合を結成。

・異様に労働法に詳しい会社の隣に住むおじさん1名
も顧問役として、労働組合に加入している。

・会社側の立場にある役職者は組合員になれない。

・組合活動費用について、会社の援助は受けていない。

・総会は開いておらず、組合役員には発起人達が就任。

この労働組合に全社員の過半数が加入している場合、

この労働組合は、36協定の締結当事者になれるのか?

 

 

【労働組合には、3種類ある】

労働組合法第2条を確認してみます。

・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
(労働組合)
第二条 この法律で「労働組合」とは、
労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善
その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として
組織する団体又はその連合団体をいう。

ただし、以下の一に該当するものは、この限りでない。

1.会社側の立場にある者でも組合員になれる。
2.組合活動費用について、会社の援助を受けている。
3.共済事業その他福利事業のみを目的としている。
4.主として政治運動又は社会運動を目的としている。
※唐鎌による超訳
・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 

菅野和夫大先生の書籍「労働法」で勉強した結果、

労働組合には、3種類(段階)あることがわかりました。

 

まず、

労働組合法第2条の本文には適合するが、

ただし書き1~4の要件を満たさない労働組合のことを

「自主性不備組合」と呼んでいます。

 

次に、

労働組合法第2条の要件すべてには適合するが、

労働組合法第5条の要件を満たさず、労働組合法の

保護を受けることができない組合を「規約不備組合」

と呼んでいます。

 

最後に、

労働組合法第2条および第5条のいずれにも適合する

労働組合を「法適合組合」と呼んでいます。

 

したがって、

36協定を締結できる労働組合の要件としては、

「規約不備組合」以上であればよいことになります。

 

ちなみに、

労働組合法第5条の要件とは、労働組合の規約に

以下の規定等が含まれることとされています。

・主たる事務所の所在地。
・民主的な方法で役員を選出する。
・毎年一回以上総会を開催する。

 

 

【事例検証】

事例の労働組合が、法第2条に適合しているか?

検証してみましょう。

 

・仕事と私生活をキッチリ分け、残業はしたくない
と考える若手社員が中心となり、労働組合を結成。

⇒労働者(≒社員)が自主的に「残業をしたくない。」
という労働条件の維持改善を主たる目的として結成しており、
第2条本文に適合していそうです。

 

・異様に労働法に詳しい会社の隣に住むおじさん1名
も顧問役として、労働組合に加入している。

⇒労働組合の主要部分を労働者(≒社員)が占めていれば、
「労働者が主体となって」いると考えられるので、
隣に住むおじさん1名が参加していても「労働組合」
たり得ると考えられます。

 

・会社側の立場にある役職者は組合員になれない。
・組合活動費用について、会社の援助は受けていない。

⇒どちらについても、第2条ただし書きに反していない
と考えられます。

 

・総会は開いておらず、組合役員には発起人達が就任。

⇒これらは、法第2条の要件に含まれていないので
問題ないと考えられます。

 

以上より、

事例の労働組合は「法適合組合」ではないが、

法第2条の要件を満たす「規約不備組合」には該当するため、

36協定の締結当事者になれると考えられます。

 

 

最後に、

とある労働組合の役員様が知り合いの労働基準監督官に

本件について質問したところ、

・36協定の締結者として労働組合の成立要件は
労働組合法2条のみとなる。

・労働組合法5条の要件に疑義があったとしても、
監督官として同条項を問う根拠がない。

とのご見解があったそうなので、お伝えします。



トップページへ戻る。